アニバーサリーブレンド

年に一度の特別な日に、その珈琲は生まれました。

 とみー珈琲のコンセプトは『珈琲人生に手助けを』。
一人でも多くの人に本当に美味しい珈琲・自分が心から好きだと思える珈琲に触れる機会を作りたいという想いから、「シチュエーション珈琲」というシリーズを展開しています。

珈琲豆は、産地によってさまざまな特徴があります。
 人と同じです。人間だって、一人としてまったく同じ人間はいませんよね。力が強いとか、歌が上手いとか、優しいとか、それぞれなにかしら、秀でた特性──個性を持っています。

 珈琲だって、それぞれ、個性があるのです。

しかし……

酸味がうんたら、後味がどうたら……お店側が一方的に提示する「味覚」情報だけではお客様にとってはイメージが伝わりづらい。だから結局、同じ物ばかり飲んでしまう。

 自分にとって最高の一杯となるかもしれない珈琲との出逢いを、潰してしまっているかもしれない。

なら、朝起きた時はこれ、音楽を聴くならこれ、スイーツを食べるときはこれ……という風に、その珈琲豆の個性を、最大限楽しめる“シチュエーション”を提供することができれば──⁉

そんな想いで、とみー珈琲は誕生しました。

このアニバーサリーブレンドは、その誕生を祝うオリジナルブレンドです。

 スッキリとした味が特徴の「寝起きのお供」、“エチオピア”。

 バランスの取れた珈琲の王道、「スイーツのお供」に最適な“ブラジル”。

 本来、人生において「特別ではない日」なんて、一日だってありません。毎日が新しいだれかや、なにかと出逢える可能性を持っている、特別な日なのです。

 でも現代社会を生きる僕らは、仕事ややるべきことに忙殺され、そんな『特別』を少しばかり感じにくくなってしまっています。遠くにでかけることや、朝から晩までのんびりするような時間を取ることは、難しいかもしれません。

 そんな日常の中の、数分間。

 たった一杯の珈琲が、人生を変えることもあります。

 ひとつ年を重ねて更に大きくなったとみー珈琲は、あなたと珈琲との“出逢い”を、提供します。

 新しい自分、おめでとみー。

 今回、『アニバーサリーブレンド』を基にした小説を書きました。
 タイトルは『おめでとう、ありがとう。』

 ひとりで過ごすには大きすぎる部屋で、いつもと変わらない朝を迎える「コトミ」という女の子のお話です。

 もう大方の察しはつく部分だと思うので軽くネタバレ(?)すると、コトミはこの日、誕生日を迎えます。しかし家に家族の姿はなく、あるのはケーキと、一杯の珈琲だけ……

 というストーリーです。書いてて思いましたが、これネタバレでもなんでもなく、ふつうにあらすじ紹介ですね。安心安心、です。状況設定は想像通りですが、このコトミのエピソード、お話の最後ではけっこう「あ、そういうことか」となってもらえる部分もありますので、お暇があれば読んでみてください。珈琲でも飲みながら。

 さて、ここからは少し余談と言うが、『アニバーサリー』という題目に合わせた話題をひとつ、つらつらと書いてみようと思います。もうちょっとだけ暇があれば、珈琲をおかわりしてお付き合いくださいませ。

 さて、まずはとみー珈琲さん。お誕生日おめでとうございます。

あ、おめでとみー。です。
 味覚ではなく、“シチュエーション”を売る。珈琲業界に一石を投じる展開に、創作と言う形で携われたこと、大変うれしく思います。

 ようやく、一周年ですね。

 しかし、このように創作世界を日々頭の中で展開しているとよく感じることなのですが。

大方の場合、だれかにとっての『特別』は、他の人にとってはただの『日常』なんですよね。

現在店舗を持たないとみー珈琲もよくイベントに出店します。創作とはまた違った形で非日常が演出され、主催者も出展者もお客様も、お祭り気分でとっても楽しい雰囲気に包まれます。

が、やっぱり人類規模で考えると、きっとその日だって特別よりも日常の割合の方が高いんだろうなあ、みたいなことを考えてしまうんですよね。両手いっぱいにパンとか珈琲を買い込みながら。冠婚葬祭や旅行だって、当人たち以外には、いつも通りのありきたりなんだろうなあ、と。

そういう風に考えていると、誕生日というのががまさに、

「限りなく日常に近い特別」の、最たる例なんだろうなあ、なんて思います。

 結婚式などは、はた目から見てもまあ盛大だし、新郎新婦はキレイに着飾ります。彼ら彼女らは、これから始まる新生活へと旅立つ、紛れもない主役です。異郷の地に降り立つ旅行者も、装備や態度を見れば、非日常の真っ只中にいることは、なんとなくわかります。

ただ、誕生日というのは。

当人が、自分はちょうど数年前のこの日にこの世界に誕生したんだ──という感慨を内包しているだけであり、およそ親しくなければ、その人が「特別な日の主役」であることはわかりません。

限りなく、日常に近い。

 しかし、それでも誕生日は特別なのです。

どんな会話の流れでも、話している相手が誕生日と聞けば、だれでも「おめでとう」と言葉をかけます。特になにかを為したわけでも、だれかと結ばれたわけではなくとも。誕生日というのは、それだけで、たしかに「特別」なのです。

 だれかが新しく生まれたということ。その人とだれかが、出逢ったということ。

 だれかが、珈琲の美味しさを新しく知れたこと。

 それ自体が、とんでもなくめでたい奇跡なんだろうなって思います。

 誕生日は、感慨に耽る日ではなくて。生んでくれたことや、生まれてくれたことへの、感謝の日だから。

 物語のなかで、コトミにはぶっちゃけ、これといった成長はありません。そもそもが年齢に比して達観した早熟なキャラクターですし、この小説で経過する時間は、およそ一時間程くらいでしょう。それこそ、限りなく日常です。

 それでも、コトミにも新しい出逢いがありました。それは珈琲と、あと、なんでしょう……それは、物語を覗いてみて、知ってください。強がりだけど寂しがり屋な彼女に、出逢ってあげてください。

 僕自身、物語を創作する機会をもらって、コトミというキャラクターに出逢うことができました。週に十杯以上飲む週もあるほど珈琲を好きになったのも、味に興味を持つようになったのも、思えばとみー珈琲がきっかけでした。おかげさまで、僕の誕生日はたくさん増えました。

 人はなにかに出逢うことで、新しく生まれ変わります。

 とみー珈琲が、これからも、毎日どこかでだれかの誕生日を増やせるブランドになればいいなって思います。

 これを読んでいてくれているあなたと僕が、もしもどこかで、出逢うことがあったなら。

そのときは、珈琲で乾杯でもしましょう。

 互いの誕生日を、祝いながら。

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