2015年の国連サミットでSDGsが採択されて以降、いろんな分野や業界でSDGsを基準とした問題提起や新しい取り組みが行われてきました。
コーヒーの消費量はここ数十年で一気に増えており、環境問題やコーヒー農家の貧困問題などは以前にも増してコーヒー業界が向き合うべき問題として注目されています。
コーヒーとSDGsにはどのような関係があるのか、コーヒーを通してSDGsにどう貢献できるのか、を今回は考えて行きたいと思います。
コーヒーとSDGsの関係とは
最近では「サステイナブルコーヒー」という言葉も出てきたほど、コーヒー業界ではサステイナブルなコーヒーのあり方を重要視しています。
私たちの身近なところだと、プラスチックストローの廃止やマイカップの推奨などに取り組んでいるカフェも多いかと思います。
そういった消費の部分から、フェアトレードやコーヒー農家の支援、市場の安定化など、多岐にわたって現状の見直しや新たな取り組みが行われてきています。
そもそもSDGsとは
SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標として掲げられました。
17のゴールと169のターゲットから構成されており、世界中の国が取り組むべきユニバーサル(普遍的)な目標として注目されています。
フェアトレードコーヒーとは
SDGsは17のゴールから構成されていますが、その中でも特に、「1.貧困をなくそう」「10.人や国の不平等をなくそう」などはコーヒー貿易がダイレクトに関係してくるゴールでもあります。
フェア(=適正な、公正な)トレード(=貿易、売買)という言葉は、現在ではもう珍しい言葉ではなくなってきましたが、以前はコーヒー豆の値段は国際市場で決まることから値段が暴落して農家が貧困に喘いだり、適正な価格で売買されずに豆の品質が低下するということが頻繁に起こっていました。
フェアトレードで適正な価格でコーヒー豆が売買されること、また市場が安定しコーヒー農家に安定した収入が入ることは、SDGs的な観点からも、また品質の高いコーヒー豆を今後も継続して栽培していくためにも必須の条件です。
SDGsな取り組みが急務!コーヒーの2050年問題
コーヒーの2050年問題とは、地球温暖化に伴うコーヒー栽培地の減少問題のことです。
コーヒーの栽培に適した土地や気候というのはかなり条件が狭く、気候変動により今まではコーヒー栽培ができていた土地が、2050年には50%も減少してしまうと言われています。
コーヒーの木は環境の変化に弱いため、地球温暖化に伴う温度上昇はもちろん、湿度や降雨量の変化などは品質の低下や収穫量の減少などを引き起こす可能性があります。
現在は環境問題に取り組むことはもちろん、環境変化や病気に強い品種のコーヒーを開発して、農家が安定した栽培をできるようになるようなサポートも行われています。
SDGsなコーヒーの代名詞サステナブルコーヒーとは
日本スペシャルティコーヒー協会では、スペシャルティコーヒーの基準に品質や味と並べてサステイナビリティを提示しているほど、今やコーヒー業界にとってサステイナブルなコーヒーのあり方を追求することは当然のこととなっています。
サステナブルコーヒーとは、フェアトレードであることはもちろん、栽培や輸送の過程や、実際に消費される段階でもきちんと環境や人権に配慮していることが重要視されています。
世界最前線コーヒーを通じたSDGsの取り組み
コーヒーを通してSDGsに取り組む動きは日本はもちろん、世界中で行われています。
環境問題や貧困問題などコーヒーが関係している多くの部分で、新たな取り組みが始まっています。
UCCが挑む「人工衛星でコーヒー農園を効率化する」
UCCグループは以前から、コーヒー生産国に対して品質向上や生産者の生活水準の向上を目指した技術指導や森林保全活動などを積極的に行ってきました。
そのUCCグループが国際航業と協業して、人工衛星から取得した情報を解析し、世界中の生産地の様子をモニタリングする実験を行っています。
この技術は、品質の向上や効率的で安定的な栽培を実現するのはもちろん、気候変動に合わせた農園開発を行うことで環境問題にも貢献できる可能性があります。
日本発!コーヒーかすから出来るタンブラーやマグカップ
SUS coffeeはコーヒーを抽出した後に残るコーヒーかすの大量廃棄問題に注目し、活用できないかというところから生まれた日本発のブランドです。
ゴミとして廃棄されていたコーヒーかすを再利用してサステナブルな雑貨を作ることで、環境問題に寄与すると共に、SDGsの意識推進などにも貢献しています。
自転車を使って生産者の収入を3倍!?グアテマラでの挑戦
コーヒーの実は採取された後、一般的にはまわりの実の部分を脱穀し乾燥・発酵させるというプロセスがあります。
この過程には大掛かりな設備と大量の水が必要になってくるため、環境破壊につながるケースや、初期投資に莫大な費用がかかるという問題点がありました。
そこに注目したGOOD COFFEE FARMは、自転車を利用して脱穀するシステムを開発。
設備投資にかかる費用を削減するだけでなく、動力となる電気や水の使用を抑えることに成功し、コーヒー農家の収入の拡大と安定化に寄与する取り組みを現在も続けています。
コーヒーも培養する時代!フィンランドでの開発
コーヒー大国フィンランドでは、将来の気候変動によるコーヒー栽培の減少を見越して、コーヒーノキの細胞からコーヒーを培養する技術を開発しているとのこと。
コーヒーを培養し、代替品として流通させられることができれば、気候変動に伴い栽培地が減った農家や国が新しく熱帯雨林を開墾するのを防げるだけでなく、輸送や生産時に使用するエネルギーの削減にも寄与できます。
コーヒーを通じてSDGsを学べる本
コーヒーとSDGsはいろんな側面から深い関係があります。
コーヒーという産業がどのようにSDGsに寄与できるのか、具体的にどういった問題や解決策があるのかなど、気になったら以下の本がおすすめです。
コーヒー×SDGsのバイブル「コーヒーで読み解くSDGs」
コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える
大学教授、国際NGOの元職員、コーヒーハンターという異なる職業の3人の著者によるSDGsとコーヒーの解説本です。
コーヒーを通じてどうSDGsに貢献できるのか、コーヒーを通してどう未来を変えていけるのか、というところに着目した一冊です。
コーヒーのサステナビリティーを考える「世界からコーヒーがなくなるまえに」
フィンランド人の著者ふたりが、ブラジルへの旅を通して感じた内容をまとめた一冊です。
コーヒー栽培の環境や、どのような人たちがコーヒーを生産しているのか、実際に見て感じたことが綴ってあり、我々が今後コーヒーとどう向き合っていくか、経済や環境、そして持続性のあるコーヒー産業を実現するために我々ができることは何か、消費者としての私たちに語りかけてくる内容になっています。
【まとめ】コーヒーを通じてSDGsの活動を支援して世界を変えよう
コーヒー業界に置けるSDGs実現のためのいろいろな活動を紹介してきましたが、もちろん私たちの身近にもコーヒーを通してSDGsに貢献できることはたくさんあります。
フェアトレードの豆を購入すること、マイカップやマイストローを活用すること、サステイナブルな取り組みに力を入れているカフェに通うこと、など消費者の意識や行動が今後は重要な鍵になってきます。
持続可能なコーヒー産業の発展に貢献し、今後も美味しいコーヒーが飲めるように、まずはできるところから取り組んで行きましょう。